2026年の遺言制度改正で何が変わる?「デジタル遺言」と新しい保管証書遺言を解説
2026/08/04
パソコンで作る遺言書が、新しい選択肢になります
こんにちは。厚木市の千々和行政書士事務所です。
2026年6月、遺言制度を見直す改正法が成立しました。ニュースなどで「デジタル遺言ができるようになる」と目にした方もいるかもしれません💻
今回の改正で新しく設けられるのが、**「保管証書遺言」**という方式です。
これまでの自筆証書遺言は、財産目録を除き、原則として本人が遺言の全文を手書きする必要があります。新しい保管証書遺言では、電子データ等を使って遺言を作成することができるようになります。
ただし、ここで注意したいのが、2026年8月現在はまだ利用できない制度だということです。
「デジタル遺言」は正式な制度名ではありません
一般には「デジタル遺言」と紹介されることがありますが、法律上の名称は「保管証書遺言」です。
また、「デジタル」という言葉から、WordやPDFで作った遺言書をパソコンやスマートフォンに保存しておけばよいようにも感じますが、そうではありません。
改正法では、保管証書遺言について、書面で作成するものと、電磁的記録で作成するものの両方が想定されています。電子データで作成するものは「電子保管証書遺言書」として整理されています。
そのため、この制度は「電子ファイルなら何でも遺言になる」というものではなく、法務局の遺言書保管制度と組み合わせた新しい遺言方式と考える方が正確です。
作成したデータを保存するだけでは効力は生じません
保管証書遺言には、法律で定められた手続があります。
改正後の民法では、遺言者が所定の証書について署名等を行い、遺言書保管官の前で遺言の全文を口述することが原則として求められます。
さらに、その証書が法務局の制度に基づいて保管されなければ、保管証書遺言としての効力は生じません。
つまり、
パソコンで遺言を書く
↓
自分のパソコンに保存する
だけでは、新しい保管証書遺言にはなりません。
本人の意思を確認する手続と、法務局での保管まで含めて一つの制度になっています。
なお、具体的な申請方法や電子データの形式など、実際の利用方法については今後、施行に向けて政令・省令や法務省の案内で詳細が示されることになります。
自筆証書遺言の「押印」も見直されます
今回の法改正では、新しい遺言方式の創設だけでなく、自筆証書遺言の方式も一部見直されます。
現在の自筆証書遺言では、遺言者が全文、日付、氏名を自書したうえで押印することが必要です。法務局の現行の遺言書保管制度でも、この方式に沿った遺言書が対象となっています。
改正法では、この**押印要件が廃止され、押印が任意になります。**成立した改正条文では、民法968条の「自書し、これに印を押さなければ」という部分から押印要件が削除されています。
ただし、これも2026年8月現在はまだ施行されていません。
押印の任意化等は、2026年6月24日の公布日から1年を超えない範囲内で政令により定める日に施行されます。それまでは、現在の方式に従って遺言書を作成する必要があります。
新しい保管証書遺言はいつから使える?
こちらは押印の見直しより少し先になります。
保管証書遺言の創設については、システム改修が必要になるため、公布の日から3年を超えない範囲内で政令により定める日に施行されることになっています。
したがって、現時点では、
「法律は成立したが、まだ保管証書遺言を作ることはできない」
という状態です。
具体的な開始日や手続方法が公表された段階で、改めて確認する必要があります。
新制度を待つべき?今のうちに遺言を作るべき?
新しい制度が始まると、遺言書の作り方の選択肢は増えます。
一方で、「デジタルで作れるようになるなら、それまで遺言書を作らずに待った方がよい」というわけでもありません。
現在でも、自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用することができます。現行の法務局保管制度では、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことで、紛失や改ざんを防ぎ、相続開始後の検認も不要になります。
遺言書を作る時期は、新制度の開始時期だけでなく、年齢、健康状態、家族関係、財産の状況なども踏まえて考える必要があります。
制度が変わっても、まず考えるのは「何を残したいか」です
遺言の作り方は、今回の法改正によって今後さらに選びやすくなります。
ただ、手書きかデジタルか、公正証書かという「方式」だけを先に決める必要はありません。
まずは、誰にどの財産を残したいのか、相続人は誰になるのか、遺言書によって何を実現したいのかを整理したうえで、自分に合った方式を選ぶことが重要です。
千々和行政書士事務所では、厚木市周辺で遺言書を検討されている方について、自筆証書遺言や公正証書遺言の作成をサポートしています。
「法改正の話を聞いたけれど、今のうちに作った方がいいのか迷っている」という段階でも、まず現在の制度でできることから整理してみましょう🌿
よくあるご質問
Q1.今でもパソコンで遺言書を作れますか?
現在の自筆証書遺言では、財産目録を除き、原則として遺言者本人が全文を自書する必要があります。新しい保管証書遺言はまだ施行されていないため、パソコンで作成した本文を保存するだけでは有効な遺言にはなりません。
Q2.「デジタル遺言」はスマートフォンだけで作れる制度ですか?
そのような制度ではありません。新設される保管証書遺言では、所定の証書の作成、本人による全文の口述、法務局での保管などが必要になります。
Q3.新しい制度が始まったら自筆証書遺言はなくなりますか?
なくなりません。保管証書遺言は、新たな遺言方式として追加されるものです。自筆証書遺言や公正証書遺言も引き続き選択肢として残ります。
Q4.自筆証書遺言はもう押印しなくていいですか?
まだです。押印を任意化する改正は成立していますが、2026年8月31日現在は施行前です。施行日までは現行法に従って押印する必要があります。
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